人は、特定の相手を特別に思うとき、自分の中で「愛情の芽生え」を感じる印象があります。この愛情というのは、単に恋人やパートナーにのみ抱くものではありません。家族や友人、二次元の存在、実在するモノなど…対象はさまざまです。
犬を家族として迎えているならば、愛犬へのつよい愛情を抱いている人ばかりでしょう。一方で「愛犬もわたしのことを好きと思ってくれているのかな?」「もっと好きになってほしい!」―――そんな悩みや想いを秘めている方も少なくないのではないでしょうか。
今回、そんなあなたに知ってほしい【愛犬に好かれる方法】は
① ふれあい時間をたっぷりとる
② 行動から「気持ち」を読みとる努力を
③ 質のいいお散歩時間を
④ 愛情をきちんと伝える
この4つです!
あわせて、愛犬が飼い主様のことを好きになるキッカケや、好きな人にだけ見せる仕草を紹介していきます。犬との日々の暮らしを振り返りながら、読み進めてみてくださいね。
犬も「愛情」を抱くの?
犬も人と同じように、特定の相手に対して「愛情」を抱くのでしょうか?―――答えは、イエスです!
「オキシトシン」というホルモンをご存知でしょうか。脳下垂体から分泌されるホルモンで、別名「愛情ホルモン」または「幸せホルモン」と呼ばれています。オキシトシンは、人や犬の自律神経(心身の調子を整えるための神経)を良好に保つための重要な働きを担っています。
このオキシトシンは、信頼関係が築かれた者同士での関わりやふれあいを通して、特に強く分泌されると知られています。その作用は、人だけでなく犬にももたらされることが科学的に証明されています!
事実、麻布大学獣医学部の菊水氏の研究では、犬と人の視線によるオキシトシンの分泌上昇が報告されています。信頼関係が築かれた犬と人にとって「視線=目を合わせる」という行為は、アイコンタクトのようなポジティブな行為です。実験では、人と犬がアイコンタクトをとることで、人のオキシトシンの分泌が促進されることが分かりました。さらに、人のオキシトシン濃度が高まることで「ふれあい(接触)」が生まれ、そのふれあいから犬のオキシトシン濃度の上昇も同様に確認できたのです。
このように、犬の体内のホルモン分泌結果から、人で言う「愛情」のような「ポジティブな心的動き」をすることがわかっています。また、人とのふれあいによる濃度上昇が見られたことから、犬も特定の人物を ❝ 特別 ❞ と思っている可能性が高いと言えますね!
(参照:菊水健史,2017年,「オキシトシンによるヒトとイヌの関係性」, https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/67/1/67_67.1.1/_pdf )
犬はどうやって人に「愛情」を伝えているの?
人は愛情を「言葉」や「行動」などを駆使して伝えます。この伝えるという行為は、時に妬みや不安などが混じることもあります。中には、相手に気持ちを向けてもらおうと、駆け引きに走る人もいます。人の愛情とは、とても複雑なものなのです。
その反面犬という生きものは素直で、自分の気持ちに忠実な子が多いです。常にド直球に「あなたのことが好き!」と伝えてくれるのです。では犬は「大好き」という愛情を、どのように人に伝えるのでしょう。
答えは「身体言語(ボディーランゲージ)」と「発声」です。犬は手足やしっぽ、耳などの全身を使って、わたしたちに感情を伝えてくれています。また、犬は言葉を話せないものの「発声」はできます。吠えたり唸ったり、声のトーンを変えながら、さまざまな感情を伝えようとしてくれています。これらの身体言語や発声を理解することで、声でも犬の感情を読み取ることが可能なのです。
犬が飼い主様を好きになる4つのキッカケとは?
犬にも感情があり、何もしなくても好きになってもらえる…というわけではありません。時間を共有していくうちに、徐々に愛情がはぐくまれ、強固な絆で結ばれている存在となれるのです。
ところで、あなたが特定の人を「好き」と思ったキッカケはありますか?きっと、ひとつやふたつ思いつく人は多いでしょう。時間を共有していくうちに、特定の対象が「特別な存在」になるキッカケが、ほとんどの場合あるのです。
では、犬はどんなことがキッカケとなり、飼い主様のことを好きになるのでしょうか。詳しくお話していきます。
【好きになるキッカケ①】褒めてくれる
犬の記憶というのは、大まかに「短期記憶」と「連想記憶」のふたつに分けられます。
短期記憶とは、言葉どおり「短期的な記憶」を指します。実は犬は短期記憶能力があまり優れていません。少し前に起きた ❝ 五感や感情がほとんど動かない出来事 ❞ や ❝ 衝動的な出来事 ❞ などは短期記憶として処理され、数秒~十秒程度で忘れてしまいます。
一方で連想記憶とは、起こった出来事を五感や感情と紐づけて覚える記憶のことです。犬は連想記憶がとても優れており、一度連想記憶として処理された記憶は、数時間から十年以上、さらには生涯に渡って覚えることができます。
この犬の記憶のメカニズムから、犬は五感や感情が大きく動けば動くほど、特定の事象や対象との出来事を覚えていることがわかります。つまり、あなたという存在を認知・記憶されるうえでも、五感や感情の結びつきが大きく関わってくるのです。
では、どんな五感や感情と結びつくことで、あなたのことを「好き」と思ってもらえるのか。―――最も意識してほしいのは、犬の「喜(嬉)」の感情です。特に褒めることは、犬に喜びをもたらすと言われています。筆者が一緒に暮らしている犬も褒められることが大好きで、「よくできたね」と声をかけると、嬉しそうに耳を下げる仕草をします!
犬は「一緒に過ごして嬉しい気持ちになるかどうか」で人を判断するもの。特に犬が嬉しいと思うのは「すごいね」「えらいね」「いつもかわいいね!」と褒めてもらう瞬間です。飼い主様に笑顔で声をかけられたと同時に、撫でられたり、おやつをもらったりすることで、犬はさらに嬉しさを感じます。そして、あなたのことを「好き!」という感情と共に記憶するのです◎
【好きになるキッカケ②】ごはんやおやつをくれる
おやつやごはんを食べることも、五感や感情と強く結びつきます!
犬の舌には、味覚を司る味蕾(みらい)細胞があります。もちろん人の舌にも存在しており、味蕾細胞のおかげで「味」を感じ取れています。つまり、犬にも食べものを「おいしい」と感じる力があるのです!
一方で、犬はにおいが強いものに食欲をそそられる、と聞いたことはありませんか?これは、犬の嗅覚が人の約100万倍も優れていることが関係しています。このように、味覚や嗅覚を刺激するごはんやおやつは、犬にとって「大好きな時間」と記憶されます。
その延長線で、犬は「大好きな時間」をつくってくれる飼い主様に好感を抱きます。つまり、いつも食事をくれる人を好きになる傾向があるのです。
【好きになるキッカケ③】気分転換させてくれる
現代の犬たちは、家族として家に迎えられると、ほとんどの子が室内暮らしとなります。室内での生活は安心して落ちつく一方で、家にずっと閉じこもりっぱなしだと気分転換ができず、どんどんストレスが蓄積していきます。
犬の気分転換方法として最も効果的なのが、お散歩です!体を思いっきり動かすことで、爽快感を得るのです。筆者と一緒に暮らす犬も大のお散歩好き。「お散歩行く?」と声をかけるだけでしっぽをブンブン振るほどです!適度な運動は、犬の運動不足解消にも役立ちます◎
また、犬にとって「外の世界」は、揺れる草花や車の音、人の話し声、他の犬との出会いなど…たくさんの刺激にあふれた場所です。お散歩をとおしてそれらの刺激を感じとることは、犬の脳トレにも役立ちます!このような五感や脳への刺激は、犬の健康寿命を延ばすことにもつながります
遊ぶ時間も犬は大好きです。好奇心を刺激されたり、ボールを追いかけたりすることで、心も体もリフレッシュすることができます!このようにお散歩や遊びをとおして「この人と一緒にいると楽しいことが起こる!」と感じることで、犬はあなたのことが大好きになるのです。
【好きになるキッカケ④】一緒にいると落ちつく
犬は、先天的に以下のような人に好感を覚えると言われています。
- 声のトーンが安定している人
- やや高めの「聴き心地のいい声」をしている人
- にこやかで優しい顔つきの人
- 気分によって接し方や態度が変わらない人 など
自分の身に置きかえてみても、上記のような人に好感を抱く人は多いのではないでしょうか。いつも怒っていたり、威圧的な態度をとっていたり、気分が悪いと強く当たってきたり…このような人は、犬にとって不安を感じる対象となります。
また、一緒に暮らしていく中で程よい距離感を保ってくれる人に、犬は安心感を抱きます。睡眠時間を邪魔しないことや、ふれあう際は犬の好きなところを撫でてくれる、など…。「この人と一緒にいると落ちつく」という感情が、あなたを好きになるキッカケになるのです。
今日から実践!愛犬に好かれるための4つの方法
犬が人を好きになる4つのキッカケから、「犬との普段のコミュニケーション時間」の充実度が、愛情に大きく関わると知っていただけのではないでしょうか。
ここからは、愛犬があなたに夢中になる方法を4つご紹介します!どれも今日から実践できることばかりなので、ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。
【愛犬に好かれる方法①】ふれあい時間をたっぷりとる
普段から愛犬を撫でたり、一緒に遊んだりするような「ふれあい時間」はたっぷり取りましょう。
仕事や家事などで忙しいと、どうしても犬との時間がとれないことがあるかもしれません。しかし、犬にとっては「飼い主様との時間」がなによりも幸せな時間です。万が一ふれあい時間が不十分だと…犬がストレスを感じるだけでなく、あなたへの印象が悪くなってしまうかもしれません。そうなれば、あなただって悲しいはず。
あたりまえのことですが、お互いが幸せに暮らすためにも、十分なコミュニケーション時間は必須です。時間がゆるす限り、ふれあい時間はたっぷりととることで、絆がどんどん深まるでしょう。
【愛犬に好かれる方法②】「気持ち」を読みとる
前述したように、犬は「身体言語(ボディーランゲージ)」や「発声」をつうじて、わたしたちに感情を伝えています。犬を迎えたてのころは、犬の感情を理解するのに、なかなか時間がかかるかもしれません。かく言う筆者自身も、一緒に暮らしている犬と出会ったばかりの頃は、うまく意思疎通ができず…かなり悩んだものです。
最初のうちは、本やインターネットなどを頼りながらでも構いません。犬が「思っていること」「したいこと」「好きなこと(嫌いなこと)」を少しずつ理解できるよう努力することが大切です。努力は、きっと愛犬にも伝わります!「この人はわたしのことをよく分かろうとしてくれる」と犬に感じてもらえたなら、あなたを大好きになる日も遠くありません。
【愛犬に好かれる方法③】質のいいお散歩をする
突然ですが…愛犬とのお散歩時、いつも同じルートを歩いていませんか?せっかく犬とコミュニケーションをとるチャンスなのに、黙々と歩いてはいませんか?
犬に多くの刺激を得てもらうためには、お散歩ルートに気を遣うことが大切です。いつも同じ場所を歩いても、犬にとっては面白味があまりありません。例えば、いつものルートを逆方向に歩くだけでも、犬は「いつもと違う風景だ!」と心躍るものです。一緒に、街を開拓するのも楽しいでしょう。筆者も方向音痴ながら、愛犬といろいろな道を日々探検しています。はじめての草花や、はじめての犬と出会えるチャンスを広げて、愛犬の探求心を刺激してあげましょう。すると犬は「この人とのお散歩は楽しい発見がいっぱいだな」とあなたに大きな好感を抱きます。
お散歩中に声をかけると、さらに愛犬は楽しい気持ちになります。「今日は風が気持ちいいね」「あっちに初めましてのワンちゃんが歩いてるよ」どんなことでも構いません。声かけをすることで「この人と一緒にいるから大好きなお散歩ができているんだ」とプラスの印象を感じてくれます。上手にお散歩ができているときに「いい子だね」と撫でてあげたら…もうあなたにメロメロになること間違いなしです!
【愛犬に好かれる方法④】愛情をきちんと伝える
さいごに、愛犬への「大好きだよ!」という気持ちは、毎日欠かさず伝えましょう。
声をかけること以外にも、撫でたりマッサージをしたり、グルーミングをしたりと、犬に喜んでもらえることを積極的にしてあげることが大切です。特にマッサージは、犬の日頃の疲れが癒される時間でもあるため、健康管理とあわせて日頃から行ってあげましょう。
また、いつもの感謝として手づくりごはんを時々あげるのもオススメです◎はじめてあげる食材は、アレルギー反応が出る可能性も考えて、少量からはじめることを忘れないようご注意くださいね。
犬があなたに「好き」を伝えているサイン5選
前述したように、犬は「身体言語(ボディーランゲージ)」と「発声」を駆使しながら、わたしたちに「愛情」を伝えてくれています。
では、犬のどのような行動が「好き」という感情を表しているのでしょう?一緒に見ていきましょう。
【好きのサイン①】お腹を見せてくる
犬のお腹はとてもデリケートな部分ゆえに、敵意のある人には見せることのない部位です。
ある意味「弱点」であるお腹を見せるという行為は、あなたに信頼を寄せているサインです!「この人なら、お腹を見せても嫌なことはしない」と、あなたを心から信じているのです。もし、コテンと寝転がるようにお腹を見せてくれたら、優しく撫でてあげてくださいね◎
【好きのサイン②】お尻をくっつけてくる
怖い人や苦手意識を感じている人が、背後にいたらどうでしょう?不安でたまりませんよね。―――それは犬も同じで、敵視する人に無防備な背中を向けることはありません。にもかかわらず、背中を向けるようにして座ってくる仕草が見られたのなら…あなたに好意を抱いている証拠です。
さらに、弱点であるお尻を飼い主様にくっつけるような仕草をすることがあります。これは、あなたに「大好き」「一緒にいると安心する」と伝えてくれているサインです。お尻をスリスリしてくれたときは、あなたからも愛情を伝えてあげることで、より強い信頼関係が築かれるでしょう。
【好きのサイン③】顔を舐めたがる
舐めるという行為は、犬にとっては大きな意味のある、大切な愛情表現方法です。特に顔や口周りを舐めたがるのは、あなたに甘えている証拠です。あわせて、しっぽを上向きにフリフリ揺らす仕草も見られることがあります。
顔周りを舐めるという行為は、犬がまだ子犬のころ、食事をねだってお母さん犬を舐めていた名残とも言われています。つまり、あなたのことをお母さんのように想っている証拠でもあります。
もちろん、愛犬の思うがままに舐められてもいいのですが…衛生面が気になるのも事実です。過度に口周りを舐めたがるときは「おすわり」などとコマンドを伝えて落ち着かせることも大切です。もしくは、犬が口周りに届かないよう一度距離をとり、代わりに撫でたり遊んだりして、甘えたい気持ちを満たしてあげるといいでしょう◎
【好きのサイン④】姿を目で追ってくる・後ろをついてくる
大好きな人の行動は、常に目で追っていたいもの。もし、ふとした時に犬がじーっとこちらを見ていたら「何をしているのか気になる!」「こっちを見て構ってくれないかな?」と思っているからです。
あわせて、飼い主様が移動したときに一緒についてくる場合があります。これは「あなたのそばにいたい」という、まさに親愛を寄せているサインです!甘えん坊な子や、寂しがり屋な子によく見られます。筆者が一緒に暮らしている犬もかなりの甘えん坊で、立ち上がるたびに目で追われ、部屋を移動するときは後ろからくっついてくるなど、まるでストーカーのようです(笑)
かわいらしい行動である一方で、エスカレートすると分離不安症になる犬も少なくありません…。分離不安症とは、特定の対象(好意を寄せている人や同居犬など)と離れると、不安なあまりにパニックを起こす、いわゆる心の病気です。かわいいからといって執拗に構うと、飼い主様への依存度が高くなってしまうため、適度な距離感を保つことが大切です◎
【好きのサイン⑤】呼ぶと嬉しそうに駆け寄ってくる
大好きな人から名前を呼ばれたり「おいで!」と声をかけられたりすると、犬は元気いっぱいに駆け寄っていきたくなるもの。なぜなら、呼んだときに近寄っていくと「喜んでくれる」と知っているから。
呼ばれたときに、お気に入りのおもちゃを持ってくる子もいます。これも、大好きな人にしかしない行動です!お気に入りのおもちゃというのは、本来独り占めしていたいもの。にもかかわらず持ってくるということは、飼い主様に「喜んでほしい」と思っているからです。犬が嬉しそうにおもちゃを持って駆け寄ってきたら、「えらいね」と褒めたり、一緒に遊んだりしてあげるといいでしょう◎
一緒に過ごす時間を、とことん大切に
あらためて、愛犬に好かれるための4つの方法をおさらいしましょう。
- ふれあい時間をたっぷりとる
- 行動から「気持ち」を読みとる努力を
- 質のいいお散歩時間を
- 愛情をきちんと伝える
「 ❝ 日常 ❞ をどう一緒に過ごすのか」を愛犬の目線に立って考えることが、仲を深めるうえで大切となってきます。どれも、特段むずかしいことではありません。
愛とは、育みあうものです。犬と一緒に暮らすことに感謝し、「どうしたらこの愛情は伝わるのか」を考えながら行動すれば、おのずと犬からもたくさんの「好き!」がもらえるようになるはずです。せっかくこうして家族になったのですから、お互いに「大好き」な存在となって、毎日楽しく過ごせるのがいちばんですよね◎ぜひ、この記事を参考に、犬との愛情を深めていただけたらと思います。
そして、わたしたちが運営している大型犬カフェ「ほっとひと犬」には、ドッグトレーナーの資格があるスタッフや、犬との暮らしに詳しいスタッフが在籍しております。犬の性格によっても「人の好み」は変わるものなので、「もっと愛犬に好かれる方法を知りたい!」という方は、ぜひ気軽に相談にいらしてください◎ほっとひと息ついたら、愛犬とふれあうヒントがさらに見つかるかもしれませんよ!