カギはオキシトシン?犬とふれあうことで得られる【癒し効果】を深掘りしてみた

犬と暮らしている方はもちろん、犬カフェに遊びに来る方が身をもって体験していること。それは「癒し」です。犬とふれあうことで、たくさんの癒し体験を味わっている方が多いと思います。

実は、「癒される~」と感じているとき、あなたや犬の体内ではおもしろい変化が起きていることが分かっています。それは、ホルモン分泌です。特に、癒しと深い関わりのあるセロトニンオキシトシンが、体内で増加・活性化することが分かっているのです

【ホルモン分泌による効果】

  • ストレスの抑制
  • 感情の安定
  • 睡眠の質の向上 など…

今回は、犬とふれあうことで得られる「癒し効果」について、セロトニンやオキシトシンなどのホルモン分泌の効果を交えて、深掘りしていきます。また、人と犬がお互いに癒されるための3つの心がけについてもご紹介します。犬とのふれあい時間をより充実させるために、ぜひ参考にしてみてくださいね。

癒しとは何なのか

ところで「癒し」とは何でしょう?突然聞かれると、戸惑ってしまう方も多いはず。まずは「癒し」という言葉を辞典で調べてみました。

精神的な不安やいらだちなどをしずめて、平安な気分にさせること。ヒーリング。

引用:『新明解国語辞典 第7判』株式会社三省堂,2020年1月10日,100ページ

身体的な意味での癒しは「治癒」という言葉で表されることが多いです。その反面「癒し(癒やし)」は、心的な意味で用いられることが多いとわかりました。一方で心と体はつねに影響しあっており、身体的な癒しが心に、心的な癒しが身体に表れることもあります。

今回の記事では「心的な癒し」に着目して考えていきます。

犬とふれあうことで生まれるホルモン

では、犬とふれあっているときの「心的に癒されている状態」を、試しに言語化してみましょう。

  • ホッとする
  • 心がほぐれる
  • つい笑顔になる
  • 疲れが吹き飛ぶ
  • あたたかな気持ちになる など…

癒しの対義語は何なのか―――答えは「傷心」です。言葉のとおり、心を傷めた状態を指します。つまり、心にストレスがかかった状態ですね。その心のストレスが緩和されたリラックス状態となることで、人は「癒された」と感じます。

癒された状態の言語化を見ても、心が安心しているリラックス状態を「癒されている」と表現することが多いです。つまり、ストレスという緊張状態をほぐすポジティブな効果を「癒し」と言うのではないでしょうか

ところで、科学的な研究によってストレス緩和への影響が確認されている、体内変化があります。それが、ホルモン分泌です。特に「セロトニン」や「オキシトシン」というホルモンは、犬とのふれあいにおける「リラックス状態=癒されている状態」において重要な役割を果たしてます

オキシトシンとセロトニンの関係性

では、オキシトシンやセロトニンとは、一体どのようなホルモンなのでしょうか?一緒に学んでいきましょう。

【幸せホルモン】オキシトシンとは

オキシトシンとは、9つのアミノ酸によって構成されているペプチドホルモンです。別名「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」とも呼ばれています。

オキシトシンには、「コルチゾール」というストレスを感じると分泌するホルモンを抑制する効果があります。日々の疲れが癒え、幸福感を得ることができるのです。

【癒しホルモン】セロトニンとは

セロトニンとは脳内の神経伝達物質のひとつです。別名「思いやりホルモン」や「癒しホルモン」と呼ばれています。人の体内には約10mgほど存在しており、体内分布は以下のとおりです。

▷ 腸内:90%

▷ 血液中:8%

▷ 脳内:2%

セロトニンは脳内に約2mgしか存在していません!それにも関わらず、人の心を安定へと導く重要な役割を担っていることで知られています。

セロトニンとオキシトシンの関係性

実は、オキシトシンの受容体オキシトシンの刺激を受け取るホルモンセロトニンの神経細胞にありますつまりオキシトシンの分泌増加が、セロトニンを活性化させるという、まさに相互関係にあるホルモンと言えます

オキシトシン:セロトニンを活発化させるホルモンで、濃度が高まることが大切

セロトニン:オキシトシンを栄養源としてはたらくホルモンで、活性化することが大切

どちらも十分に分泌されることで、わたしたちは「癒し」を実感しているのです。

セロトニンの活性化によって得られる2つの効果

では、ホルモン分泌によって、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか。

ここからは、犬とふれあうことで活性化されるセロトニンのはたらきが、わたしたちの精神面に与えてくれる効果についてご紹介していきます。

【セロトニンの効果①】ストレスの抑制に役立つ

ノルアドレナリンという、緊張や恐怖など、ストレスに影響する神経伝達物質があります。別名「怒りのホルモン」と呼ばれていますが、適切に分泌されれば、心拍数や血圧を適度に上昇させ、やる気や意欲の向上に役立つホルモンです。

しかし、度を超えた肉体労働や感情の変化などがあるとノルアドレナリンが過剰に分泌されることがあります。すると、攻撃的な感情で心が乱れ、うつ病などの精神疾患につながる危険性があるのです…

セロトニンは、そんなノルアドレナリンの過剰なはたらきを抑える効果がありますあらゆる肉体的・精神的ストレスから守る ❞ のような役割を担ってくれているのです

【セロトニンの効果②】感情が安定する

ドーパミンという言葉は、耳なじみがあるかと思います。主に脳への快感を与えたり、活力を生み出したりするときにはたらく神経伝達物質です。学習能力・運動能力・記憶力などのはたらきを司っています。余談ですが、前述したノルアドレナリンとアドレナリン、セロトニンは「三大神経伝達物質」と言われており、わたしたちの体内でとても重要な役割を担っています

ドーパミンは人が活発に生きるために必要不可欠である一方で、過度に分泌されると衝動的な欲求が抑えられなくなります。例えば、食事の摂りすぎ(食べすぎ)やアルコール依存症の原因になることも…。

一方でセロトニンが正常に分泌されると、ドーパミンによる衝動的な行動を抑えることができます。つまり、常に安定した感情で行動ができるようになれるのです◎

【番外編】睡眠の質が向上する

脳内のセロトニンは、決して精神面に作用するだけではありません!例えば、睡眠の質の向上です。

朝の起床時から夕方までの間で、さまざまな場面で活発に分泌されたセロトニンは、脳の中心部分に位置する松果体(しょうかたい)という器官で「メラトニン」というホルモンをつくります。メラトニンとは、睡眠時に分泌されるホルモンで、豊かな睡眠を得るうえで必要不可欠な存在です

メラトニンは、セロトニンが日中に分泌されればされるほど、快眠効果が高まります。

オキシトシンが増える!犬とのふれあいシーン3選

犬 撫でる スキンシップ

セロトニンとは、いわばわたしたち人の心を落ち着かせるための「ブレーキ」のようなはたらきをしています。そのブレーキの原動力となるのが、オキシトシンです。つまり、オキシトシンの分泌を増加させることがわたしたちの心をリラックス状態=癒されている状態へと促すためのカギと言えます

ここからは、実際の研究データを参考にしながら、犬とのどのようなふれあいシーンにおいてオキシトシン濃度が上昇するのかを解説していきます。

【犬とのふれあいシーン①】見つめ合い

麻布大学獣医学部の菊水氏の研究では、犬と人の視線によるオキシトシンの分泌上昇が報告されています。

犬にとって目を合わせるという行為には、本来「威嚇」のような攻撃的な意味合いがあります。しかし、信頼している飼い主様に対しては、目を頻繁に合わせる習性があります。人で言う「アイコンタクト」ですね。目と目を合わせることで意思疎通がスムーズになるのです。

つまり「犬に目を見つめられている」という状況は、犬が飼い主様を信頼している証拠と言えます!その「信頼されている」という事実は、飼い主様にとってとても喜ばしいことですよね。

実際に、犬と人が見つめ合ったとき、人の体内のオキシトシン濃度は3倍以上に増えたことが研究結果として判明していますさらに、視線を合わせたことから「犬とのふれあい」が発生し、犬のオキシトシン分泌も同様に増加したのです

(参照:菊水健史,2017年,「オキシトシンによるヒトとイヌの関係性」,https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/67/1/67_67.1.1/_pdf

【犬とのふれあいシーン②】長時間・高頻度のコミュニケーション

犬は、飼い主様と一緒に遊んだり、一緒に散歩をしながらコミュニケーションを取ることが大好きです。この「コミュニケーション」に着目したのが、麻布大学大学院獣医学研究科の三井氏です。

三井氏の研究によると、飼い主様である人から犬への接触が、犬の尿中オキシトシン濃度を上昇させることがわかりました。また、①コミュニケーション時間が長く頻度が多い場合と、②コミュニケーション時間が短く頻度が少ない場合。②は犬の尿中オキシトシン濃度の低下が確認され、人では変化はありませんでした。一方で①では、犬と人どちらも尿中オキシトシン濃度の上昇が確認されたのです

犬と人のコミュニケーション時間の充実が、お互いのオキシトシン上昇に大きな変化をもたらすことが分かりましたね◎

(参照:三井正平,2012年,「人と犬のより良き関係に関する生理学的研究~相互コミュニケーションにおけるオキシトシンの役割~」)

【犬とのふれあいシーン③】スキンシップ

犬との信頼関係を築くだけでなく、体の健康状態を知るためにも大切なスキンシップの時間。やさしく撫でたりマッサージしたりする時間は、犬はもちろん、飼い主様も幸せな気持ちになりますよね。

それもそのはず。オキシトシンは本来、家族や恋人、パートナーなど、好意を持つ人と共に過ごすことで増えると言われています。手をつなぐ・抱き合うなどのスキンシップはもちろん、会話や食事などでも増えることから、ときに「絆ホルモン」や「抱擁ホルモン」などとも呼ばれます。

つまり、犬という大切な家族とのスキンシップは、オキシトシン濃度がとても高まる機会なのです。特に、肌と肌が触れあうマッサージは、オキシトシンの分泌に大きな効果があると言われています。

信頼構築にも役立つ!犬と人が癒されるための3つの心がけ

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ここまで読んできた方ならお分かりかと思いますが、心の安定状態である「癒し」とは、人だけでなく犬も得られるものです。それならば、ふれあい時間をとおして犬にも幸せな気持ちになってもらいたいですよね。

一方で、犬が癒されるための行動にはアイコンタクトスキンシップなど一定の信頼関係が構築されていることが大前提となる行動が多いですつまり、相互的に癒されるためには、犬から信頼してもらえるよう行動することが大切です

ここからは、犬に信頼を寄せてもらえるだけでなく、実践することで自然と「癒し」効果を得られる3つの心がけをご紹介します。犬と暮らしている方も、そうでない方も、ぜひ参考にしてみてください。

【心がけ①】話しかける

あたりまえですが、犬と人は言葉で「会話」することはできません。しかし、犬は人に話しかけてもらえると嬉しくなる生きものです。なぜなら「わたしのことを気にかけてくれいるんだ!」と思うからです。

話しかけるとき、低いトーン且つ強い口調で話しかけると「もしかして怒られている…?」「何か悪いことをしちゃったのかな」と犬を不安な気持ちにさせてしまいます。犬に声をかけるときは、程よく高いトーンでゆっくり且つ優しい口調を意識しましょう。すると、リラックスした気持ちであなたの声に耳を傾けてくれるでしょう。

【心がけ②】おやつやごはん時間にコミュニケーションをとる

前述したように、オキシトシンは親密な人とのおしゃべりや食事などで増えることがあります。ひとりでゆっくり食事を嗜む時間もいいですが、家族や友人とおしゃべりをしながらの食事はとてもたのしいですよね。それを、犬の食事タイムに応用してみましょう。

既に愛犬と暮らしている方は、例えば、ごはんやおやつをあげる前に「おすわり」「おて」などのコマンドを使って、トレーニングを取り入れてみてください。すると、自然な形でコミュニケーションをとりながら食事をたのしんでもらえます◎さらに人が「えらいね」と褒めたり撫でたりすることで、犬は食事という喜びだけでなく「あなたに褒めてもらえた!」という嬉しい気持ちで満たされ、オキシトシン濃度が更に高まることでしょう

【心がけ③】ありがとうの気持ちを伝える

オキシトシンは、ときに「思いやりホルモン」とも呼ばれます。なぜなら、大切な相手を思いやることでオキシトシンの分泌は促進されるからです。

犬は、人の言葉を本質的に理解はできません。しかし、日々のコミュニケーションを通じて、言葉をニュアンスである程度聞き分けることができるようになります。だからこそ「おすわり」などのコマンドを聞き分け、それに応じることができるのです。

犬に感謝の気持ちを伝えるときは、心がけ①でもお伝えしたように程よく高いトーンでゆっくり且つ優しい口調を意識しながら「ありがとう」と言いましょう。あなたの様子から「嬉しい言葉なんだな」と理解してくれるはずです。

また、ありがとうの気持ちは言葉だけでなく、行動でも伝えてあげましょう。例えば、犬が好きなご褒美おやつをあげたり、お気に入りのおもちゃで遊んであげたり、お散歩に出かけたり…「犬が喜ぶことを一緒にするイメージです。すると、あなたの犬への感謝の気持ちがきちんと伝わり、オキシトシン濃度も高まる可能性が高いです。さらに「この人といると嬉しいことがたくさん起こる」と犬が感じ、あなたに大きな信頼を寄せてくれるようになります◎

犬と人は、お互いに癒され合いがら共存している

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今回は、犬とふれあうことで得られる「癒し」について深堀りしてみました。

癒しには、オキシトシンやセロトニンなどの「ホルモン分泌」が大きく関わっていることを知っていただけたかと思います。特に癒しのカギであるオキシトシンは、犬との多くのふれあいシーンで増加します。

また「犬と人のふれあい」は、決して人にだけ利がある行為ではありません。ふれあっている犬も、自然と人に癒されているのです!つまり、わたしたち人と犬はお互いに癒し合いながら共存するパートナー」というわけです

では改めて、犬との信頼関係構築に役立ち且つ犬と人が相互的に癒されるための3つの心がけをおさらいしましょう。

  • 話しかける
  • おやつやごはん時間にコミュニケーションをとる
  • ありがとうの気持ちを伝える

犬と人の信頼関係があって、はじめて相互的にオキシトシンやセロトニンが分泌され「癒し」を感じることができます。犬とふれあう際は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてくださいね。

わたしたちが運営している大型犬カフェ「ほっとひと犬」でも、極上の癒し体験ができること間違いなしです!大型犬たちはみんなフレンドリーで、人とふれあうことが大好きな子ばかり。実際に撫でたりマッサージをしたり、話しかけたり、おやつをあげたり…大型犬とのふれあいをとおして、どっぷりと「癒し」を堪能いただけたらと思います◎

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